見張り灯籠

 

九十九耕一

写真
「このところ、この辺りを泥棒が荒らしているそうだ」
「夜は戸締まりをしっかりしとかんと……」
「ところが、きちんと戸締まりをしておいても、無理矢理戸をこじ開けて押し込んでくるらしい」
「いや、それは恐ろしい」
「そこで腕に覚えのあるこの俺様が、庭で見張りに立ち、とっ捕まえてやろうと思う」
「それは助かる。しかし、おぬしが庭で見張っておっては、泥棒も警戒しよう」
「それはそうだ。では、こうしよう。俺はしゃがむから、そこの石灯籠の屋根を乗せてくれ。動かずにおれば、泥棒は俺を石灯籠だと思うだろう」
「名案、名案。では、人を呼んでこよう。俺ひとりでは、とても動かせぬ」
「やれ、情けない。あの程度の屋根も動かせぬのか。おうおう、四人がかりとは」
「おい、おぬし。四人でやっと持ち上がるものを、乗せたりして無事か?」
「俺に言わせれば、そんなものに四人がかりのほうが情けない。さあ、遠慮無く乗せろ」
「では、参る。よーいとこせっ!」
「おう……なるほどこれは……いささか重いのう。いや、なに、重いと言ってもこんなもの、俺様にとってはさほどでもないわ。さあさあ、奥に引っ込んでくれ。おぬしらがおっては、泥棒も近寄らぬわ」
「うむ。では、まかせたぞ」
「……行ったか? 行ったな。やれ、これはひどい重さだ。ちょっと脇に置いて……いや、まいった。重くて身動きがとれんわい。人の手を借りねば、こいつを頭から下ろせぬぞ。泥棒め、来るな、来るなよ。頼むから、来てくれるなよ」
 石灯籠 睨み睨んで 朝を待ち 

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